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１２．旦那様（ニセ）が、嫁（ニセ）のために愛の大告白（ホンモノ？）をしちゃいます！ その４
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2025-07-15 05:43:16
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幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです １３．旦那様（ニセ）、鈍感嫁（ニセ）にプロポーズ大作戦です！ その１
パーティーは午後九時に無事お開きとなったものの、私はその後も多くのお客様に捕まり、一矢についてあれこれと根掘り葉掘り尋ねられた。私が思っていた以上に一矢の経営手腕を高く評価してくださっている方が多く、口々に「彼は若いのに本当に優秀だ。これからも旦那様をしっかり支えてあげてください」と激励された。旦那様（ニセ）はまだまだ若く魅力的なだけに、私の後釜を狙う女性も決して少なくないと肌で感じる。だからこそ、少なくとも当面は『実はニセ嫁でーす』なんて軽々しく口にするわけにはいかないだろう。今さらながら、自分が足を踏み入れてしまった世界の厳しさを痛感した。 そんな中、パーティーの最中に起きた私のピンチを中松がすぐに察知し、駆けつけてくれた背景には、意外にも花蓮様の存在が大きく関わっていたことを後から知った。杏香さんが私を連れ去ったことをいち早く中松に伝えてくれたのが花蓮様だったのだ。そのお陰で中松は自分が重役客人に引き留められたことが策略であると確信し、すぐさま行動に移すことができたのだという。 意地悪で傲慢な令嬢だと最初は思っていた花蓮様が、本当はとても優しく、勇気のある人だと知った瞬間だった。感謝の気持ちは伝えたけれど、もし花蓮様がいなければ、私は今頃とんでもなく恐ろしい状況に陥っていたかもしれない。本当に助けられた。 そんなことを考えていると、一矢が私の傍にやって来た。「片付けは他の者に任せてきた。伊織、話をしたいことがあるから早く帰ろう」「あ、うん」 彼は少し疲れた顔をしていたが、私を見つめる目には安堵の色が見えた。「今回は美緒にも随分世話になったな。また改めて礼に伺おう。彼女にもよろしく伝えてくれ」「あの……実はね、美緒が中松のことをすごく気に入っちゃったみたいで、その……紹介してほしいって。中松を美緒に紹介してもいいかな？」 執事の主人である一矢に、念のため許可を求めた。すると、一矢は意外にもほっとしたような表情を浮かべて言った。「そうか、美緒が……。中松にはずっと女性の影がなかったから、これでも少し心配していたんだ。実は中松が伊織に本気にならないかと不安でもあったしな」「えっ……？」 思わず動揺して、声が裏返ってしまった。「……いや、なんでもない。とにかく、中松を美緒に紹介するのは構わないぞ。伊織の妹からの紹介なら、中松も無下には断る
幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです １２．旦那様（ニセ）が、嫁（ニセ）のために愛の大告白（ホンモノ？）をしちゃいます！ その４
沈黙を破るべく、一矢がパンパン、と手を叩くと、絞られていた照明が一気に元に戻され、華やかな会場が再び明るく照らし出された。「本日は私の醜い家庭内事情をこのような晴れの場で発表せざるを得ず、大変申しわけございませんでした。この一連の件に関しましては、全て私の独断で行ったものです。叱責も責任も全て私が一身に引き受けます。どうか関係のない者への取材や質問はご遠慮くださいますようお願い申し上げます。また、私の婚約者である伊織は一般の女性でありますゆえ、過度な取材等で彼女が傷つくようなことがあれば、三成家は全勢力を挙げてこれに立ち向かう所存でございます。どうかご理解賜りますよう重ねてお願い申し上げます」 有無を言わせない断固とした一矢の美しい微笑みに、場内は一瞬静まり返り、そのカリスマ性に飲み込まれるかのようだった。「さて、本日はあくまでお祝いの席でございます。私事で恐縮ではございますが、以降はどうぞご自由に歓談をお楽しみいただき、心ゆくまでお料理やお飲み物をお召し上がりくださいませ」 その言葉で張りつめていた会場の雰囲気が一気に柔らぎ、ふわっと温かい空気に包まれた。ざわめきが和やかな笑い声へと変わっていった。 ほっと胸を撫で下ろしたその時、背後で待機していた美緒が私の耳元でひそひそと話しかけてきた。「お姉ちゃん、見てた？ イチ君めちゃくちゃカッコ良かったよね！ ずっとニセとか言ってたけど、あれ、どう見てもホンキじゃないの？ お姉ちゃんのこと、かなり好きだと思うよ！」「そ、そんなはずないわよ……。きっとこの場を取り繕うためだけのシナリオよ。今だけの話だと思うわ」 私は慌てて首を振ったけれど、美緒は悪戯っぽい笑顔を浮かべてニヤニヤしている。「そうかなぁ？ そうは思えないけど。ま、いいや。それよりもね、お姉ちゃん、後で中松さんをちゃんと紹介してよね！」「え？ なに、どうしたの突然？」 どうして中松なんだろう、と思っていたら、美緒が目をキラキラ輝かせて、頬を赤らめながら興奮気味に続ける。 「中松さんよぉ！ もう、本当に理想そのものなんだから！ お姉ちゃんが居なくなった時の中松さんったら、チョーカッコ良くて、チョー怖かったのよ！ あの鬼みたいな迫力、最高にシビれちゃった！ これもう、絶対行くしかないでしょ!!」 そうだった。美緒は昔から任侠映画やアウ
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「彼女たちは前妻の不貞によって生まれた子供であり、父である三成泰平との血縁関係は一切ございません。したがいまして、この度の調査により彼女らが三成家と無関係であることが明白になった以上、彼女たちがこれまで所有してきた財産は全て差し押さえ、即刻会社役員の座からも解任致します。そして、本日をもって三成家からの永久追放をここに宣言いたします」 一矢の衝撃的な発言に、会場は騒然となった。驚愕に包まれた人々は囁き合い、激しいフラッシュが一斉に一矢を照らした。「突然の発表にて皆様を大変驚かせ、また困惑させてしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます。しかし、三成家に関係する全ての皆様には、今後も変わらぬお付き合いをお願いしたく存じます。これまで以上に皆様の会社の繁栄と成功のため、私自身が全責任を持ち、最大限の努力をお約束いたします。未熟者ではございますが、何卒温かいご支援とご指導を賜りますよう、深くお願い申し上げます」 一矢は言葉を切ると、深々と頭を下げた。私も慌てて隣で深くお辞儀をすると、更にフラッシュの嵐が襲った。（そんな重大な発表をするなんて、一言も聞いてない……！） 恐らく私が襲われるというあの事件が引き金となり、予定を前倒ししてこの場で秘密を暴露する決断をしたのだろう。だからこそ、一矢は原稿なしで堂々と発表をしたのだ。 そして私はようやく納得がいった。なぜお義姉さまたちが執拗に一矢を敵視し、目の敵にしていたのか――それは、彼女たち自身が三成家の真の子供ではないことを知っていたからだ。血の繋がらない二人にとって、本当の後継者である一矢の存在は脅威だったのだろう。この秘密が明るみに出れば、自分たちが家を追われる立場になることは明らかだった。だからこそ、一矢を遠ざけ、陰湿な嫌がらせを繰り返してきたのだ。 許せない。これほど酷い仕打ちがあるだろうか。真実を知った怒りと悲しみが胸に込み上げる。 一矢はあえてこの公の場で彼女たちの悪事を暴き、明確にけじめをつける道を選んだ。それがどれほど三成家にとってダメージになるか、彼自身も十分理解しているはずだ。しかし、そんな犠牲も覚悟の上で、一矢は自分の手で全ての問題を解決し、責任を全うする覚悟を示した。 彼は本当に強くなったのだ。 あの頃、公園で泣いていた幼い一矢の面影は、もうどこにもない。苦境を乗り越え、自分自身の
幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです １２．旦那様（ニセ）が、嫁（ニセ）のために愛の大告白（ホンモノ？）をしちゃいます！ その２
「これまで、未熟な私を一人前に育て上げるため、皆様には身に余るほどの深い愛情とご支援を賜ってまいりました。その温かなお心遣いに対し、心より感謝申し上げます。また、多くの皆様からは数々の素晴らしいご縁談を頂戴し、貴重なご令嬢をご紹介いただく機会にも恵まれておりました。しかし、実は幼い頃から心に決めている女性がおりました。ずっと胸の中で温め、大切に想い続けてきた女性です。本日はその女性をご紹介いたしたく、この場を設けさせていただきました。ご紹介いたします。緑竹伊織さんです」 一矢の言葉が終わるか終わらないかのうちに、会場は一気にざわめき始めた。ざわざわと困惑するような低い囁きが波のように広がり、端の方で待機していた私の存在に気づくと、スポットライトが一斉に当てられた。「伊織、こちらへ」 柔らかな声と共に一矢が手を差し伸べてくれた。私は小さく頷いて、緊張で震える手を抑えながら彼の元へと歩き出した。 この日のために、中松から厳しく仕込まれた令嬢としての歩き方を思い出し、背筋をまっすぐ伸ばし、お腹に力を入れた。――歩く姿は、エレガントに！ 中松の厳しい声が頭の中に蘇り、緊張が和らぐ。 堂々と、高いヒールを履いてもつまずかないように丁寧に歩を進め、一矢が差し出してくれた手をそっと受け取った。 一矢の隣に立ち、皆様の方へ向き直り、精一杯の微笑みを浮かべると、途端にフラッシュが激しくたかれ、眩しさで一瞬目が眩んだ。 ひいいいーっ、写真を撮られるなんて聞いてないわーっ！ そんな内面は出さずに私は必死に笑顔を保ち続けた。「彼女――緑竹伊織さんは、私の幼馴染でございます。幼少期より、孤独であった私に変わらぬ愛情を注ぎ、友人として励まし、支え続けてくれたかけがえのない存在です。彼女の温かな優しさと心遣いなくして、私は今日この日を迎えることはできませんでした。彼女はもちろん、そのご両親、そしてご関係者の皆様には感謝してもしきれません。本当にありがとうございます」 一矢の言葉を聞きながら、胸が熱くなった。トン、と優しく腰を叩かれ、私が挨拶する番になった。「ただいま、一矢さんからご紹介頂きました緑竹伊織と申します。わたくしは両親と共に小さな洋食屋を営んでおります。正直申し上げまして、わたくしのような庶民の家柄は一矢さんにまったく釣り合わないこと、十分承知しております
幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです １２．旦那様（ニセ）が、嫁（ニセ）のために愛の大告白（ホンモノ？）をしちゃいます！ その１
美緒と中松の協力のおかげで、なんとか迅速に支度を終え、控室で待つ一矢のもとへ向かうことができた。 予備として用意されていたドレスは、最初のものに勝るとも劣らない美しさで、美緒と私はその準備の良さに改めて感動した。やはり、中松は本当に『キングオブ執事』だと思う。 時計の針はすでに午後六時を回っていたが、開場直後のためまだ問題はない。 私の入室と同時に、一矢は険しい表情をしてこちらへ駆け寄ってきた。どうやら中松から状況を聞いているようで、その瞳には抑えきれない怒りと心配が混じっている。一矢は美緒や中松の存在などお構いなしに、私を力強く抱き締めた。「伊織！ 無事で本当に良かった。パーティーの主催者として客人を放置できず、中松に任せきりで……。お前が大変な目に遭っている時に傍にいてやれなくて、本当に申し訳ない！」 その抱擁は震えるほどの強さだった。正直、あの恐怖を思い出して震えるかもしれないと不安だったけれど、一矢のぬくもりはむしろ安心感を与えてくれた。一矢も中松も、私にとっては心から信頼できる存在なのだ。「ごめんなさい。一言、中松に声をかけてから行くべきだったのに、杏香さんから『お祝いを渡したいから』と誘われて、ついそのまま付いて行ってしまったの。これからは気をつけるわ」 私が経緯を話すと、一矢は眉を顰め、首を振った。「お前が謝る必要などない。杏香に誘われてしまえば、俺のことを考えて断れなくて当然だ。そもそも俺がもっと配慮していれば、こんなことにはならなかった。二度とこんな危険な目には遭わせないと約束する」「大丈夫よ。本当に、もう謝らないで」「怪我はしていないか？」「平気。中松が駆けつけてくれたから」 あの時の恐怖や男に触れられたことは決して言えない。一矢をこれ以上傷つけるわけにはいかないから。胸の奥に押し込めて、早く忘れてしまおう。 一矢は私の瞳を真っ直ぐ見つめて、決然と告げた。「今日できちんとけじめをつける。俺の傍で、スピーチを聞いていてくれ」「ええ、もちろん」「それから……パーティーが終わって屋敷に戻ったら、二人きりで話がしたい。今後のことをしっかりと話し合おう。とても大切なことだ」「わかったわ」 一矢の強い決意を感じ取り、私は頷いた。「よし、それでは行こう。お前を正式に皆に紹介しなくては」「はい！」 ぐっとお腹に力を入
幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです １１．ニセ嫁の大ピンチに駆けつける執事が、実は本物の鬼だった件。 その６
「お前を――」 中松の続く言葉を、私はあえて遮った。彼がこれ以上踏み込んでしまえば、お互いに取り返しがつかなくなる気がしていたからだ。「私、ニセ嫁辞めないから！」 はっきりと、迷いのない声で告げる。 中松の言葉の続きは、聞いてはいけないと心が警告を鳴らしている。聞けば動揺してしまうだろうし、私の中に新たな迷いが生まれてしまう。それだけは絶対に避けたかった。 二十年。 私の心はずっと一矢を見つめてきた。その年月の重さを、たった一瞬の感情で簡単に揺るがせてはいけない。「私は一矢が好きなの。こんなことになったのは、覚悟が足りなかった私の責任よ。中松の言うとおり、『この程度』のことで泣いている場合じゃない。もっと強くならなきゃ、一矢を守れないでしょう？」 自分自身を奮い立たせるように声に力を込めた。「さっきは初めてのことだったから、本当に怖かった。でももう大丈夫。だって、私がほんとうに困ったとき、あなたは命を懸けてでも助けに来てくれるんでしょう？」 真剣に問いかけると、中松は深く力強く頷いてくれた。「中松、私にも忠誠を誓ってほしいの。『この程度』のことに負けたりしないわ。どんなにひどい目に遭わされても、私は耐える。だって、あなたがいてくれるんだもの。一矢だって、同じ気持ちだと思うわ」 私が右手の甲をゆっくりと差し出すと、中松は迷うことなく片膝をつき、深い忠誠を誓う騎士のように丁寧にキスを落とした。「この中松道弘、生涯をかけて一矢様と伊織様をお守りすることを誓います」 彼の低く真剣な声が響く。 これで良かった。中松とは、これ以上でもこれ以下でもない、主従の絆を結ぶのだ。「さあ、こんな格好じゃパーティーには出られないわ。予備のドレスはあるわよね？」「当然用意しております」 さすが中松。完璧な準備を怠らない彼が頼もしい。「それと、美緒も呼んで。もう一度、私をあなたたちの手で極上のシンデレラに変身させてほしいの。貧民の娘が華麗に舞踏会へ乗り込む姿、見せてやるわ！」 中松は魔法を使う妖精のように、私の願いを聞き入れた。 まだ微かに震える自分の手を強く握りしめる。本当は怖くて不安で仕方がないけれど、今ここで負けるわけにはいかない。 ここまで来てしまった以上、途中で投げ出したら絶対に一生後悔する。ニセの嫁だろうと、私の初恋は自分自身の手で美し
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